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「手づくり靴」の作り手として
 先日、僕が靴を習ったモゲ・ワークショップ(現在の呼称はmoge塾)のブログを見ていたら自分の名前が出ているのに驚き、内容を読んでみると少し考え違いがあるのではというものでしたので、ご本人にはメールでその旨をお伝えしました。
いつも返事は無い方なので、結果どうなったかは特に関与しませんが、モゲさんのブログだけ読んでいる方は思い違いのままというのはいけませんので、その時の手紙の内容をここに載録しておきたいと思います。





大変ご無沙汰しております。
いつものようにブログを拝見しておりましたら、自分の名前が出ているのに驚き、
学生当時よく怒られていたのを思い出して懐かしんでおりました。
今では苦言を頂くような存在の人も周りに少なくなり、嬉しくというのは変ですが、光栄に思っています。

さて、こんな機会でもないとなかなか自分の考えを伝えることも無いと思い、
モゲ・ワークショップを出たひとりの者が、どのような思いで靴をつくっているのかをお伝えしようと筆を取りました。
そういう主張ができることが、モゲ・ワークショップで学んだことの一つだと思っておりますので、どうぞご容赦ください。

モゲさんがブログ中で引用している文言、「当時のモゲ・ワークショップでは、技術的な知識や経験が不足しているだろう所は多少あったと思う」というくだりですが、
2014年に、確か都内の靴学校が幾つかある中、どこが良い学校かというような質問をしてきた人に対して返答した「素朴な質問に対する厄介な回答」というなかの一節だと思います。
前後の文脈を見て頂くと分かるのですが、決して技術の優劣をもって学校や人を評価しているのではありません。
むしろその逆で、そういう外形的なものが学校や指導者の評価を決めるものではなく、教えを請う側の心構えや価値規範を問うている内容で、自分が教えを請うたところの価値というは、将来自分自身がそれをどう血肉にしたか(自分次第)で変わるのですよ。ということを伝えたかったのだと思います。

モゲワークショップを出て、自らを「手づくり靴」の担い手と信じて、今年で工房を構えて16年目を迎えました。
僕の認識不足かもしれませんが在籍していた当時は、まだモゲさん以外に「手づくり靴」のワークショップのみで本当の意味で独りで生計を立てている人は(結婚されていて独立されてる女性は何人かいましたが)いなかった様に記憶しています。
それならばと、後から続く「手づくり靴」を目指す人たちの、大きな夢ではなく、小さくも確実な道しるべとなろうと自分を鼓舞し、勝手な思いで独りこの道を歩んで来ました。
あの一節は、「手づくり靴」が軌道に乗ってある程度安定している所にいようとも、自分にはまだ何か足りないものがあるだろう(何事も完全なことなどない)という思いで、常にある種の危機感を抱きながら靴づくりを続けてきたことへの表れだと思います。

若輩ながら、僕は手づくり靴の専修科を主宰させて頂いていますが、その希望者に向けて書いている一節をここに、僕の「手づくり靴」への取り組みとしてご認識頂ければ幸いです。

自分にとって良い靴とはどんなものか、どういう靴を作ってどんな人に手渡したいのか。
そして、将来どんな社会を築いていきたいのか。
今までの自分と向き合って靴との関わりを探求していきます。
靴の本意とは何かと考えることは、
自分自身の「生きかたち」を見い出す手がかりにきっとなるはずです。


モゲさんは「手づくり靴」のパイオニアとして尊敬する方ではありますので、末永いご活躍を祈るばかりです。
僕は僕の「手づくり靴」を全うすべく、自分自身の信ずる道を進むのみです。
| 雑記 | 12:51 |
WORKSが変わります。
WORKS(靴の専修科)は、今年度・第11期から二期制になりました。
定員は春入学3名、秋入学3名で総員は変わりませんが、入学時期をずらすことで一人ひとりの生徒と向き合える時間と手間が増えることが、今回の変更に至る大きな理由です。以前から考えていたこですが、幸いというか春入学の生徒が少なかったことも、二期制に踏み切れる良いタイミングだったのだろうと思っています。
当の生徒達も、先輩が取り組んでいる半年先の課題を傍らで見ることで、次の作業や課題全体へのイメージがより掴みやすくなることでしょう。

さて、靴とはなんぞや!

自分にとって良い靴とはどんなものか、どういう靴を作ってどんな人に手渡したいのか。
そして、将来どんな社会を築いていきたいのか。
今までの自分と向き合って靴との関わりを探求していきます。
靴の本意とは何かと考えることは、
自分自身の「生きかたち」を見い出す手がかりにきっとなるはずです。

興味のある方は是非靴工房を見学に来て、目と耳と肌で工房の空気を感じてください。
| works | 09:52 |
手づくり靴というもの

この3月に手作り靴の専修科「WORKS」の10期生が卒業を迎えました。今は4月から新たに浦和工房に通い始める11期生のための準備を進めているところです。昨年から「Village」となって、湘南地域の手づくりコミュニティーの担い手となるべく奮闘している茅ケ崎工房でも、運営を任せているクルーの新旧入れ替えなどがあったようです。
そこで、いま手づくり靴に携わっているみなさんや、これから手づくり靴を目指そうという方々に向けて、手で靴をつくることの本意とは何かを考えてみました。

当工房の「WORKS」では年齢や学歴、経験等の入学条件は一切ありません。誰でも靴の作り手(あえて靴職人とは言いません。これからの作り手は以前の職能的呼称の範疇では納まらなくなっていくと感じているからです。)になることができます。そして、在校生や募集説明会に来られた方からよく受ける質問に、「どのくらいの年月修行すれば仕事になりますか」とか「どのくらいのレベルまで到達したら独立が許されるのでしょうか」といったもが多くあります。
僕はよくWORKSの生徒に言うのですが、最初の課題ワンピース(構造的に一枚革でできてるパンプスなどの靴)が終わったら、もうその靴に関しては教えてもいいんだよ。パンプス講習会とか謳ってワークショップなんかを開いてみたらどう?という具合に。
靴づくりは(幸か不幸か)公認されているような資格がないので、いつ誰がどのくらいで始めても良いと基本的には思っています。だから一つ靴の作り方を習ったら、それを教えて欲しい人に教えてあげたら良いと真面目に思っています。そんなことを言っていると、靴業界だと思われる人から「もっと靴のことを勉強してから言え」などと、もっと技量が上の人がいる中で、その程度で何を言うか的な指摘を受けたこともありました。ただ先程も申し上げましたが、靴づくりはお上や業界団体の許認可を受けてやらなければならない仕事ではありません。なので、どのくらい修行すれば仕事として成立するのか、どの程度の技量をもっていればお客さんを取ってもいいかなんてのは自分自身が決めることなのです。
つまり誰かの評価など気にせずに自分がやりたい様にやればいいのです。また逆説的に言うならば、だから誰にでもできるものではなく、誰かに言われるまでもなく自らを鼓舞して、自戒の気持ちを忘れずにやり続けなければならない仕事だとも言えるのです。

さらに言うなら、靴づくりは単なる仕事という枠を飛び越えて、作り手の生きかたちの表象かもしれません。

靴を自らの手で作ることで(規格靴をオートメーションのごとく作るのではダメなのね)自分の中にしっかりとした一本の幹ができます。そして、どんな人に手渡したいのか、どういう人達と関係を築いていくのか、どういう環境で生活したいのか、どういう思想をもってどんな社会を築きたいのか、それらの願いや苦悩が「どういう靴を作りたいのか」というカタチに結実するのだと思うのです。そして、もし信認や評価を求める対象があるとするならば、それは靴づくりの名人や業界団体のお偉方ではなく、手渡した靴を履いてくれるその人に他ならないのです。

手づくり靴は自身の「手」に全てを託して、自分を全うしようとする「生きかた」です。だから、誰に何を言われようとも自分のペースでそれぞれ一人ひとりの個性を存分に発揮して、人生と寄り添うような靴を作り続けていけば良いと思うのです。
 
| works | 18:29 |
足と靴のお話(ハイヒールを作らない訳)
当工房では通常の革靴はもちろんですが、自転車の専用シューズも作っています。どんな靴を作る時にも共通して言えることですが、足と靴の基本として気をつけていることがあります。それは足の「ニュートラル」を保つ(崩さない)ということです。特に自転車用シューズになると、足をニュートラルにしておいて石膏取りした足型で靴を作る程です。

ではまず足のニュートラルが何かを説明しなければなりませんね。
靴を作る工房は沢山増えましたが、足のニュートラルを意識して作っているところは、僕の学校の卒業生のところ意外ではあまり聞いた事がありません。しかし、現在の足病学や足を扱うプロの分野では常識となっている理論なのです。
足がプロネーション(回内)もサピネーション(回外)もしていない状態を「ニュートラル」といいます。足骨格の理想的な状態を指し、それが崩れる事で足の機能不全や靴の不適合が誘発されます。外反母趾や開張足という足の不具合は殆ど足のニュートラルが崩れていること(オーバープロネーション)に由来します。また、膝痛、腰痛といった症状も足のニュートラルが崩れたことが原因で起こることがあります。それほど靴を作る上で「ニュートラル」を意識するかそうでないかは重要なことなのです。

当工房ではHPでも謳っているようにハイヒールはつくりません。ロウヒールやミドルヒール(3cmくらい)の丸グリのパンプスは作りますが、ハイヒール(聞くところによると4cm以上がハイヒールらしい)はお断りしています。ではなぜハイヒールは作らないのか?勘の良い方はお分かりだと思いますが、ハイヒールは足のニュートラルを崩してしまいます。
少し専門的になりますが、足がニュートラル(回内でも回外でもない状態)であるためには、足の距骨下関節と横足根関節(ショパール関節)が安定していることが条件になってきます。その点で足をハイヒールの形にすることは、横足根関節を開く(関節がゆるくなる)ことになり、足のオーバープロネーションを助長する状態になるのです。そうすると隣接している距骨下関節も回内し、足のニュートラルは崩れてしまいます。
ハイヒールを履いている人を良く見てください。膝が内股になっている人を多く見かけます。膝の内股(脚部内旋)と足部の回内は連動していますので、ハイヒールを履いて膝が内側に入っているのは足のニュートラルが崩れている証拠です。

靴を作ることは、少なからずその靴を履く人の健康に責任を負っていると考えると、足の解剖学やバイオメカニクス(生体構造学)などはこれからの靴職人(靴のつくり手)には必要不可欠な知識なのだと思います。
 
| works | 13:19 |
自転車シューズ製作記


競輪選手用シューズの石膏型を仕込んだ所です。
今回は自転車用シューズの製作課程をちょっとだけご紹介しましょう。

マスター型(純粋に素足を石膏で取って整形したもの)は一作目の時に作ったものがあるので、そこに靴の裏地や靴下のような追加になる分をシートワックス(シート状になったロウで、均一に1mmや2mmで容量を増やせるスグレモノ)を張る。
そして、歯医者さんが歯の型を取る時に使う印象材(ピンク色でミントの味)に、そのマスター型を入れてレプリカ型をつくります。
レプリカ型をカーボン屋さんに送って底面にカーボンシートを張ってもらうと、自転車シューズ用のカーボンソールが出来上がるわけです。なぜレプリカを作るかと言えば、カーボンソールが固まった後にソールを外すために、石膏型はたたき壊してしまうからです。カーボンソールが出来あがって来て靴のアッパーをつり込むときのために、石膏型(マスター)は残しておかなければならないのも理由の一つです。

只今、3月開催のG1に向けて鋭意製作中です。
| 自転車 | 10:09 |
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