CALENDAR
S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>
MOBILE
qrcode
ARCHIVES
<< 手づくり靴イノベーション | main | ものづくりの正義 >>
信じる力

新しい年になりましたが、もう2月も半ばを過ぎようとしています。

年に数回しか更新されないブログですが、お目に留まった方はどうぞご覧下さい。

 

長年考えていたことで頭の中でモヤモヤしていたものが少し晴れたというお話しです。

 

 さて、靴を作る上で大事なことは何だと思いますか。特に「手づくり靴」(既製靴を手で作っているのは別です)では靴の履き手との良好な人間関係が築けるか否かが、足に合う靴を作るのに大変重要な要素になると靴を始めた頃から常々思っていましたし、WORKS(手づくり靴専修科)の生徒らにも、靴づくりは「履き手との関係を作ること=人づくり」だと教えてきました。

そういう良好な関係を築けた方とは総合的に靴づくりがうまくいくし、その後も関係は続いていくだろうことは、みなさんにも想像に難しくないと思います。さらに実際に足に対するフィット感や、痛みが出る・出ないにもそれは関わっているように思えていて、ただそれは自分の経験則に従った感覚的(主観的)なもので、もし誰かに証明してみせろと言われたら、15年以上そんな気がしてやってきたのでとしか言えないと思っていました。

 

 先日、足に靴型装具を付けた男性が突然工房にやって来て言いました。いままで40年以上この足の装具と付き合って来て、全国にある殆んどの装具屋を廻ってみたのだが、ただの一度も自分の足に合った靴型装具を作ってもらったことがない。なので作った中では何とか履けるという靴をいつも不満ながらに履いている。とのこと。そして、履いて来た靴の不満な点や、装具屋がいかに怠慢で経済的な合理性しか考えておらず、自分たちのような足の人のことを本当に考えて靴を作ってはいない。という話を2時間近く聞いていただろうか。

そこで思い出したのはある義肢装具士学校の先生の話です。患者と医者の間に信頼関係がないと、装具士がどんなに良い義足を作っても患者は義足に違和感や痛みを覚えることがあるそうなのです。その男性の話もまったくの嘘ではないと思いますが、この先どんな装具屋や靴屋さんが(僕も含めて)作っても、彼が満足いく靴は出来ないだろうとその時感じていたのでした。

 

 ある日、BSのテレビ欄に「腰痛の新常識」という、腰痛持ちには何とも魅力的な題名の番組があるのを発見して見てみたところ、腰痛の8割は原因不明(特定できない)らしく、自分は腰痛持ちだという意識や痛みへの恐怖心を持つこと自体が脳に悪影響して、脳が痛みを緩和する物質を出すことを妨げてしまい、結果的に慢性的な腰痛になったり痛みを長引かせてしまうという内容でした。靴を作りながら経験的感覚として何となくぼんやりと形をなしていたものが、輪郭を与えられて腑に落ちたという感じです。

 

 今までの話を総括すると、手づくり靴において履き手と靴のグッドフィッティングには、履き手と作り手の信頼関係(この人に作ってもらった靴だから大丈夫)が重要だということです。感覚的なものと思っていたことが、医科学的にも証明され始めていることだと分かってきました。信頼関係があればどんな靴を作っても痛くないしフィットすると言ってるのではありません。そこに胡座をかいて適当に靴づくりをしている人は、最終的には信頼されなくなるというパラドックスを含んでいますので、その辺をくれぐれもお間違えなく。

まさに信じる者は救われるのでしょう。

| 雑記 | 15:39 |