CALENDAR
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>
MOBILE
qrcode
ARCHIVES
<< 足と靴のお話(ハイヒールを作らない訳) | main | WORKSが変わります。 >>
手づくり靴というもの

この3月に手作り靴の専修科「WORKS」の10期生が卒業を迎えました。今は4月から新たに浦和工房に通い始める11期生のための準備を進めているところです。昨年から「Village」となって、湘南地域の手づくりコミュニティーの担い手となるべく奮闘している茅ケ崎工房でも、運営を任せているクルーの新旧入れ替えなどがあったようです。
そこで、いま手づくり靴に携わっているみなさんや、これから手づくり靴を目指そうという方々に向けて、手で靴をつくることの本意とは何かを考えてみました。

当工房の「WORKS」では年齢や学歴、経験等の入学条件は一切ありません。誰でも靴の作り手(あえて靴職人とは言いません。これからの作り手は以前の職能的呼称の範疇では納まらなくなっていくと感じているからです。)になることができます。そして、在校生や募集説明会に来られた方からよく受ける質問に、「どのくらいの年月修行すれば仕事になりますか」とか「どのくらいのレベルまで到達したら独立が許されるのでしょうか」といったもが多くあります。
僕はよくWORKSの生徒に言うのですが、最初の課題ワンピース(構造的に一枚革でできてるパンプスなどの靴)が終わったら、もうその靴に関しては教えてもいいんだよ。パンプス講習会とか謳ってワークショップなんかを開いてみたらどう?という具合に。
靴づくりは(幸か不幸か)公認されているような資格がないので、いつ誰がどのくらいで始めても良いと基本的には思っています。だから一つ靴の作り方を習ったら、それを教えて欲しい人に教えてあげたら良いと真面目に思っています。そんなことを言っていると、靴業界だと思われる人から「もっと靴のことを勉強してから言え」などと、もっと技量が上の人がいる中で、その程度で何を言うか的な指摘を受けたこともありました。ただ先程も申し上げましたが、靴づくりはお上や業界団体の許認可を受けてやらなければならない仕事ではありません。なので、どのくらい修行すれば仕事として成立するのか、どの程度の技量をもっていればお客さんを取ってもいいかなんてのは自分自身が決めることなのです。
つまり誰かの評価など気にせずに自分がやりたい様にやればいいのです。また逆説的に言うならば、だから誰にでもできるものではなく、誰かに言われるまでもなく自らを鼓舞して、自戒の気持ちを忘れずにやり続けなければならない仕事だとも言えるのです。

さらに言うなら、靴づくりは単なる仕事という枠を飛び越えて、作り手の生きかたちの表象かもしれません。

靴を自らの手で作ることで(規格靴をオートメーションのごとく作るのではダメなのね)自分の中にしっかりとした一本の幹ができます。そして、どんな人に手渡したいのか、どういう人達と関係を築いていくのか、どういう環境で生活したいのか、どういう思想をもってどんな社会を築きたいのか、それらの願いや苦悩が「どういう靴を作りたいのか」というカタチに結実するのだと思うのです。そして、もし信認や評価を求める対象があるとするならば、それは靴づくりの名人や業界団体のお偉方ではなく、手渡した靴を履いてくれるその人に他ならないのです。

手づくり靴は自身の「手」に全てを託して、自分を全うしようとする「生きかた」です。だから、誰に何を言われようとも自分のペースでそれぞれ一人ひとりの個性を存分に発揮して、人生と寄り添うような靴を作り続けていけば良いと思うのです。
 
| works | 18:29 |